「ありがとう」と言われる仕事が好き。
でも、自分の暮らしも守りたい。
介護の現場では、やりがいと同時に、体力、家族の介護、子どもの受験といった事情が重なることがあります。
この物語は、「働き続けたい」という想いを持ちながらも、辞めることを考えていた介護士が、キャリアパス加算という制度をきっかけに、週2正社員という新しい選択肢と出会っていく物語です。
制度を説明するだけでは、働き方の本当の意味はなかなか伝わりません。でも、物語の中で誰かの悩みや選択にふれると、「もし自分だったら」と考えるきっかけになります。
福祉・介護士編では、介護報酬という公定価格の中で「加算」に頼らざるを得ない事業所のリアルを描きながら、「働き続けられる介護施設」とは何かを考えていきます。
主人公は、小規模デイサービスに十年以上勤める介護士・佐々木佳代。
娘の受験と、母の介護が重なり、フルタイムを続けることが難しくなっていました。「中途半端にはしたくない」という思いと、「まだ続けたい」という思いのあいだで揺れています。
一方、施設長の宮本俊明は、積み上がった加算の申請書類を前に頭を抱えていました。介護報酬は公定価格で、単価は動かせない。増収の道は「加算」しかない——けれど、雛形をコピーして提出するだけの書類に、いったい何の意味があるのか。
「キャリアパス加算って、結局、何のためにあるんですか」
その問いに、市の担当者も答えられませんでした。答えを探して招いたキャリアコンサルタントと社会保険労務士が示したのは、「辞めさせない仕組み」ではなく「活躍し続けられる仕組み」という視点でした。
そして、その先に見えてきたのが、短時間正社員という働き方。時間ではなく役割で責任を定義したとき、辞めるしかないと思っていた人に、もうひとつの選択肢が生まれます。
週2正社員は、単に働く日数を減らす制度ではありません。これまでなら辞めるしかなかった人が、役割を持ちながら働き続けられるようにするための選択肢です。
介護人材の不足が課題になる中で、人を新しく集めることばかりに目が向きがちです。けれど、いま働いている人が「辞めなくてもいい」仕組みをつくることのほうが、現場にとってはずっと確かな力になります。
頭数をそろえることと、戦力がそろうことは、同じではありません。この物語が、新しい働き方を考えるきっかけになれば幸いです。