『ふたたび介護の未来へ』
舞台は、地域に根ざした小規模デイサービス。加算の書類に追われる施設長、辞めることを考えている介護士、体力の限界を感じるベテラン、余裕をなくした若手。それぞれの立場から、「働き続けられる場所」を探していく人たちです。
小規模デイサービスに十年以上勤めるベテラン介護士。娘の受験と母の介護が重なり、フルタイムを続けることが難しくなっている。「中途半端にはしたくない」という思いと、「まだ続けたい」という思いのあいだで揺れながら、退職を考えはじめる。
「辞めたいんじゃなくて、続けられないんです」
利用者に慕われる人柄だが、経営と現場の板挟みに苦しむ。介護報酬は公定価格で単価を動かせないため、増収の道は加算しかない。雛形をコピーして提出してきた自分たちのやり方に、やがて疑問を抱きはじめる。
「俺たちが知りたいのは、点数を取る方法じゃない。この制度を、何のために使えばいいのか、だ」
創設時からの古株。「昔は根性で続けたのに」が口ぐせの頑固者。長年の立ち仕事で膝を痛め、体力的にフルタイムは厳しくなっているが、心の奥では「まだ誰かの役に立ちたい」と思っている。
「時間は減ったのに、辞めなくてよくなったら、なんだか前より張り合いがあるのよ」
明るいが、いつも仕事に追われて余裕がない。短時間勤務に真っ先に反発する、現場のリアルな声の代弁者。やがて「働き方は時間の長さではない」と気づいていく。
「週2なんて、無責任じゃないですか」
少しずつ記憶があいまいになっているが、子どもたちに教えた歌と、佳代の名前だけは忘れずにいてくれる。忘れてしまったことを悲しむのではなく、笑う。その笑い方を、佳代は好きだった。
「あら、佳代さん。今日は、来てくれたのね」
実地指導に訪れる生真面目な若手職員。書類の整合はチェックできても、制度が「何のためにあるのか」は答えられない。国の理念が現場に届いていないことを、その沈黙で映し出す。
「……国の要件では、記録されていれば、算定は可能です」
加算を「点数を取る仕組み」ではなく、人が働き続けられるためのキャリア開発として捉え直す視点をもたらす。職員一人ひとりの「働いていてよかった瞬間」を丁寧に拾い上げていく。
「辞めさせない仕組みではなく、活躍し続けられる仕組み。選択肢を増やして、“ここで働きたい”と思える道を残すことです」
青いファイルを携え、制度を「仕組み」として設計する役割を担う。評価や責任を時間の長さではなく役割で定義することで、短時間でも正社員として働ける道筋を示す。
「制度は箱にすぎません。中に何を入れるかは、みなさん次第です」