あとがきにかえて
看護師、保育士、介護士。どの現場にも共通していたのは、「人が足りない」という課題ではありませんでした。本当の課題は、「働きたいと願う人が、働ける場所を見つけられないこと」だったように思います。
制度は時に、雛形のように書類を埋めるだけのものに見えてしまいます。キャリアパス加算も、短時間正社員制度も、最初は「国の意図が伝わらない仕組み」として現場に落ちてきました。けれど、それを形式で終わらせるのか、人を活かす仕組みとして息を吹き込むのか。その選択は、現場にいる私たちに委ねられています。
大切なのは、誰かを縛りつけることではありません。「辞めさせない仕組み」ではなく、「辞めなくてもいい選択肢」を増やすこと。誰かが活躍し続けられる場所を、そっと残しておくこと。
少子化が進み、労働力が減っていく社会。右肩上がりの成長を、もう前提にしなくてもいい時代。そのなかで組織が用意できる最高の筋書きは、働く人に、より多く、より自由な選択肢を差し出すことではないかと思うのです。
「週5で働けなければ、居場所がない」のではなく。「週2でも、週3でも、ここにいていい」。そう言える場所は、数字の成長ではなく、人と人の関係が豊かに育つ場所なのだと思います。
佳代さんは、辞めずに済みました。制度がそうさせたのではなく、彼女自身が「もう一度、ここにいる」と選んだからです。未来は、制度ではなく、ひとりひとりの選択から始まるのだと、あらためて思いました。
この物語が、誰かにとって、自分の働き方を考える小さなきっかけになれたなら。それ以上の幸せはありません。