ふたたび園庭の未来へ 小さな気づき|第8話 保育士編

ふたたび園庭の未来へ|第8話

── 小さな気づき

週2勤務を始めた亜紀は、ひまりの小さな変化に気づきます。

その気づきが、少しずつ現場の空気を変えていきます。

第8話 小さな気づき

「ひまりちゃん、今日ちょっと元気ない?」

お昼前の教室。

窓から差し込むやわらかな陽ざしの中で、子どもたちは思い思いにお絵かきをしていた。

亜紀は、ひまりの後ろにそっとしゃがみ込む。

白い画用紙に並ぶクレヨン。

昨日まで明るい色ばかりだったその絵に、今日は灰色や茶色が増えていた。

「先生、すごいですね。」

隣で見ていた陽菜が、小さくつぶやく。

「私、全然気づきませんでした。」

昨日から園庭の掃除、お昼寝の準備、連絡帳。

やることが重なり、みんな余裕がなくなっていた。

「ひまりちゃん、お腹すいた?」

亜紀がやさしく声をかける。

ひまりは首を横に振った。

でも、その目には小さく涙がにじんでいた。

「昨日、おうちで何かあったのかな……。」

陽菜が心配そうにつぶやく。

「大丈夫。」

亜紀は穏やかに笑った。

「ご飯のとき、私が隣に座ってみるから。」

その一言に、陽菜は少し驚いたように笑う。

「……週2でも、ちゃんと見てるんですね。」

亜紀も笑った。

「毎日じゃなくても、見てるよ。」

子どもの変化は、勤務日数ではなく、向き合う時間の中にある。

ひまりの小さな手をそっと握りながら、亜紀はもう一度、自分がここで「先生」でいられることを確かめていた。

そのとき、廊下の向こうから保育士たちの小さな声が聞こえてくる。

「……でもさ、保護者はどう思ってるんだろうね。」

その言葉に、亜紀は静かに顔を上げた。

次に向き合う相手は、子どもではなく、保護者だった。

次回 第9話

「週2の先生で大丈夫ですか?」

保護者からの不安の声に、高梨園長が向き合います。