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── 週2の初日
いよいよ、亜紀の新しい働き方が始まります。
久しぶりの保育園。懐かしい匂いと子どもたちの声が、止まっていた時間を少しずつ動かしていきます。
「じゃあ、今日からお願いします。」
玄関のガラス戸を開けた瞬間、懐かしい匂いが亜紀の鼻をくすぐった。
絵本とクレヨン、お昼寝布団のやさしい匂い。
少し冷たい廊下の空気。
全部が、遠い昔のようでいて、昨日の続きを歩いているようにも感じられた。
「石井先生、よろしくお願いします!」
若手保育士の陽菜が、小さく頭を下げた。
目が合う。
まだ少しぎこちない。
でも、その表情には確かに彼女なりの歩み寄りが見えていた。
「こちらこそ、よろしくね。」
自分の声は思ったより震えていなかった。
それだけで少し安心する。
園庭では子どもたちが砂場を囲み、夢中になって遊んでいた。
小さなバケツに水を入れ、こぼしては笑う。
そんな何気ない朝の景色が、とても懐かしかった。
「おはようございます。」
声をかけると、一人の女の子がこちらを振り向く。
「せんせい、だれ?」
その一言に、思わず笑みがこぼれた。
「今日から一緒にいる石井先生だよ。」
陽菜が優しく説明する。
女の子は少し照れながら頭を下げた。
「お名前は?」
「……ひまり。」
「ひまりちゃん、よろしくね。」
そう言って、そっと頭をなでる。
その瞬間、胸の奥がふわっと温かくなった。
会社でもなく、会議室でもない。
園庭の空の下で、小さな子どもに「先生」と呼ばれる。
その何気ない一言が、自分の背中をそっと押してくれる。
まだ不安はある。
週2という働き方が、本当にうまくいくかも分からない。
それでも今は思えた。
「週2でも、できることを。」
心の中で静かにつぶやきながら、亜紀はもう一度、子どもたちの笑い声が響く園庭へ歩き出した。
亜紀だから気づけた、小さな園児の変化。
その気づきが、現場の空気を少しずつ変えていきます。