ふたたび園庭の未来へ ──迷いを家に連れて帰る|第4話 保育士編

ふたたび園庭の未来へ|第4話

── 迷いを家に連れて帰る

保育園での言葉を胸に抱えたまま、亜紀は家へ帰ります。

何気ない家族の一言が、「また働く」という選択を、少しだけ現実のものにしていきます。

第4話 迷いを家に連れて帰る

「おかえりー。」

夕方、買い物袋をぶら下げて帰宅すると、リビングから中学生の長男が顔を出した。

ソファには、ゲーム機とプリントが散らかっている。

「何かあった?」

「別に。」

そっけない返事に、思わず笑ってしまう。

子どもは大きくなると、嬉しいことも心配なことも、なかなか口にしなくなる。

スーパーの袋から野菜を取り出しながら、今日の保育園でのやりとりがふと頭をよぎった。

週2とか、週3とか。

子どもたちと一緒にいる時間が短くても、先生としてやっていけるのか。

「久しぶりにお願いします」なんて言われて、すぐに自分が“できる側”に戻れるのか。

「ママ、今日、どこ行ってたの?」

冷蔵庫を開けようとした長男が、何気なく振り返る。

「んー、保育園にちょっとね。」

「また働くの?」

ドキリとした。

思わず野菜を落としそうになる。

「働くっていうか……まだ、わからないよ。」

「ふーん。」

長男はそれ以上、何も言わなかった。

でも、その何気ない一言が、亜紀の心の奥をそっと揺らした。

“また働くの?”

大きくなった子どもの背中を見ながら、もう一度、自分が誰かの名前を呼ぶ場所に戻れるのかどうか。

考えがまとまらないまま、亜紀は水を張ったボウルの中で、落としたピーマンをそっと拾い上げた。

次回 第5話

園長から、あらためて「戻ってきてほしい」と伝えられる亜紀。

けれど現場では、週2勤務への不安の声も上がり始めます。