“フルタイム信仰”にサヨナラを──採用コストと社保負担を見直す「短時間正社員」という現実的な選択

求人を出しても人が集まらない。
ようやく採用できても、数ヶ月後には「フルタイムで働くのが難しくなりました」と辞めてしまう――。

中小企業の現場で、こうした声が後を絶ちません。

でも、ちょっと待ってください。
その社員、本当に辞めるしかなかったのでしょうか?


「フルタイムで働けない=辞めるしかない」の思い込み

介護や子育て、自身の健康、パートナーの転勤、副業の挑戦など、働き方が変わる理由はさまざまです。
その結果、「今の勤務形態では続けられません」と正直に打ち明けてくれる人がいたとしたら――

その時点で、「じゃあ辞めるしかないね」となってしまっては、あまりにももったいない。

そこで注目してほしいのが「短時間正社員制度」です。
週5日×8時間が難しくても、週2~3日や短時間勤務で“正社員”として働き続けるという仕組みです。


採用コストと社保負担、どちらが本当に重いか?

よく聞かれるのが「社会保険の会社負担が高すぎて短時間正社員は厳しい」という声です。

たしかに、週20時間以上働く場合は、健康保険・厚生年金への加入義務が発生します。
給与が月8.8万円(≒年収約106万円)を超えると、扶養から外れて会社負担が発生するケースが多くなります。

例えば:

  • 月収10万円の短時間正社員の場合
     →会社負担の社保コストは約15,000円前後/月(健康保険+厚生年金の事業主負担分)

一方で、一人採用するためにかかるコストは、最低でも数十万円と言われています。

  • 求人広告・媒体費用:10〜30万円

  • 面接・教育・育成工数:10万円以上相当

  • 早期離職リスク:再募集の手間・費用

つまり、**1人の短時間正社員が6ヶ月続けてくれた時点で、十分に“元が取れている”**可能性もあるのです。


いまいる社員に“第2の選択肢”を提示する

もうひとつ大事なのは「新しく採る」ことだけでなく、「辞めそうな人を辞めさせない仕組み」です。

「フルタイムがきつくなった」と相談してきた社員に対して、
「じゃあ、週2〜3日勤務の短時間正社員という形で続けない?」と提案できたら。

経験もスキルもわかっている人材に、そのまま残ってもらえる。
これほど企業にとってありがたい話はありません。


「制度がないからできない」はもったいない

多くの中小企業が「うちはそういう制度がないから…」と、短時間正社員の導入に二の足を踏んでいます。

でも、制度はゼロから作れます
就業規則を少し整備し、社労士に相談して社保条件を明記するだけで、意外と導入はシンプルです。

実際、制度を作った企業では「フルタイム信仰をやめたら、逆に応募が増えた」という声も出ています。


フルタイムじゃなきゃ、働けないなんて誰が決めた?

かつての日本は、「終身雇用・フルタイム」が当然でした。
でも今は、人生100年時代。働き方は人それぞれです。

週5働くことだけが「真面目な働き方」ではありません。
週2日でも、しっかり成果を出してくれる人は、会社の大きな戦力になります。


まとめ:人手不足の時代に、“固定観念”こそがコストになる

採用にお金をかけ続けるのか。
今いる人に柔軟な選択肢を提示して、一緒に働き続けるのか。

フルタイムにこだわらず、“働き続ける道”を企業側が差し出せるかどうか。
そこに、これからの企業の「人を活かす力」が問われている気がします。


#短時間正社員 #社保負担と採用コスト #フルタイム信仰をやめよう #人手不足対策 #中小企業の人材戦略 #働き方改革 #週2正社員 #離職防止策 #固定観念にNO